デビュー10周年を迎える人気ヴァイオリニスト吉田恭子の8作目アルバムは、指揮界を代表し世界で活躍する広上淳一と、岩城宏之・井上道義ら音楽監督の薫陶のもと、海外からも惜しみない賞賛を集めるオーケストラ・アンサンブル金沢との共演。
吉田恭子(ヴァイオリン)
指揮:広上 淳一 オーケストラ・アンサンブル金沢
録音:2009年 石川県立音楽堂
チャイコフスキーの妖艶な調べに想いを寄せて
抜群のステージ・プレゼンスを誇り、音楽好きからも各種メディアからも熱い眼差しを寄せられている吉田恭子さんだが、彼女は私たちの声援に応えつつ、次なる境地を目指す。この人は、聴き手と創造の喜びを分かち合ういっぽう、作曲家の内なる尽きせぬ声を掬(すく)う。弦が紡ぐ魔境に想いを寄せているのだ。探究心の絶えない、そして芯のぶれない才媛と評すべきか。ゆえにファンは益々彼女のメッセージ性にあふれたヴァイオリンに惚れる。虜になる。<ノスタルジア>に酔いしれ、<祈り>の情趣を味わい、<パッション>に喝采を贈り、その名も美しい<グランド・ワルツ>で舞いの美学に抱かれてきた。そして……。2009年、吉田恭子さんは満を持してコンチェルトの傑作を披露する。広上淳一の指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢という最高のパートナーを得たとなれば、ファンならずとも落ち着かない。彼女は飛翔した。この美貌のヴァイオリニストは人気に頼らないし、甘えない。内外のオーケストラで評価の高いマエストロ広上との交歓も、今アルバムの大いなる聴きどころである。役者は揃った。また今アルバムには素敵なサプライズ、心憎いアンコールも添えられている。小品にも想いを寄せた。楽の音を慈しむ吉田さんに、あらためて拍手の花束を。
奥田佳道(音楽評論家)