
Mother earth Vioin 京胡
“胡弓(こきゅう)は二胡、京胡(きょうこ)、三胡、板胡、月胡など弦の数や本体の作りや材質によって多くの種類があり、それがいろいろな場面、状況で使い分けられます。つまり中国では弦楽器を総称して胡弓と言います。
その中でも最も大切で、習得することが最も困難な胡弓の中の胡弓、それが京胡なのです。
京胡の奏者のみが琴師(きんし)と呼ばれます。何故なら京胡は京劇の首席伴奏楽器として使われ、歌い手(つまり主役)と京胡琴師の絶妙に呼吸のあった掛け合いによって、中国オペラである京劇は成り立っているからです。
それはジャズと同じように、基礎を完璧に修得した本物の歌い手と琴師だけが生み出せる、変幻自在で、譜面のないイマジネーションとインスピレーション、そしてテクニックの芸術なのです。京胡は全て竹で作られています。
共鳴部分となる筒の部分には、噛まれると5歩も進まないうちに死ぬと言われるウロコの大きい毒へび「五歩蛇」の薄い皮が張られています。
弦の数は二本、特殊なスチール製の糸が使われています。弓は馬の尻尾の毛の束を使います。それを二本の弦の間に挟んで弾きます。
京胡は擦弦(さつげん)楽器ですから、演奏する前に松ヤニを燃やして、共鳴筒と弦の根元のところに垂らし、弓と弦の摩擦を生み出させます。こうしないと音が出ないのですよ。わたしが演奏すると筒の部分から煙のようなものが舞い上がりますが、これは固まった松ヤニが弾く度に粉となって舞い上がるものです。
京胡はもともと蒙古で生まれた弦楽器であり、もっとも簡素で自然な弦楽器と言えるかも知れません。
そして京胡は、人間の声に最も近い音を出すと言われているのですよ。これに対して二胡と呼ばれる胡弓はウロコの小さいニシキヘビの厚い皮が使われています。”
ウー・ルーチン自伝ノンフィクション
ポプラ社刊「もし風が見えるなら」
第1 章2 1 ~ 2 3 頁より
注:中央アジアを発祥とする楽器である京胡(きょうこ)は、中国名はジンフー(J i n g h u)。
西のバイオリン、東の胡弓のルーツとも言われ、その自然で素朴な構造から母なる大地 のバイオリン(マザーアース・バイオリン)と呼ばれる。

